夢から覚めると暗闇が広がっていた。
何て事の無い日常。
今はどれだけそれが恐ろしくとも、耐え続ければ朝が始まる。
いつも通りに、穏やかに。
それなのに、
何かがいるような、気がして。
暗闇が、暗闇の中にいる何かが、襲い掛かってくるような気がして。
だから、追い立てられるように、逃げ出した。
振り返ることすら、できないまま。
月の見えない空はおおいかぶさるように迫り、向かう道先にはどこまでも暗闇が横たわっている。
顎が上がり、もつれそうになる足を必死に動かして走った。
纏わりつくような湿気を含んだ夜の空気の中を、もがくようにただひたすら進む。
血流が体中を暴れまわり、筋肉が軋んだ。
心臓が、肺が、限界を訴えて悲鳴を上げる。
それでも立ち止まる事はできなかった。
逃げなければいけなかった。
逃げなければ、追いつかれる。
追いつかれたら、捕まる。
捕まれば……終わりだ。
「―ッ!!」
奥底から湧き上がるような恐怖に、声にならない悲鳴を上げ、全身から冷や汗が噴き出す。
血は焼け付くほどに熱いはずなのに、視界の端に映る指先が凍えるように震えていた。
いや、指先だけではなかった。
全身が震え、怯え…けれど立ち止まる事もできず、必死に恐怖を振り払うように走り続けた。
怖い、怖い、怖い、
誰か、
誰でもいいから、
誰か、誰か、
堂々巡りの思考。そこから先へは進めずに。
誰かに助けて欲しいのか。誰かに守って欲しいのか。
両方を願っているような気がした。けれど、諦めている自分もいた。
だからただ、逃げ続けた。
何に怯えているのかも分からないままで。
どこへ行けばいいかも分からないままで。
―どこへ逃げるの?
―逃げ切れる?本当に?
行ける場所など、どこにもないというのに。
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帰省中?夏休みの出来事です。
これが自転車だったら、そのまま自分探しに行けそうな気がしました。
大抵はノリで書いてます。思いつき思いつき。
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